No.622023.11.1
(令和5年11月1日更新)
まず、労働契約の締結に際し、労働基準法上、「使用者は、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示」する義務があります。
そして、そのうち一部の「賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」こととなっています(労働基準法第15条第1項)。
具体的には、労働契約の期間に関する事項、就業時間に関する事項、賃金に関する事項や退職に関する事項をはじめとした一定の事項について、原則として書面の交付によらなければならないとされています。
<労働契約の締結・更新の労働条件明示事項が追加>
平成25年4月から始まった有期労働契約が通算5年を超えると無期転換申込権が発生することについて、法制度を理解していない企業や無関心な労働者が多いことが問題であるとされてきました。それを受けて令和6年4月1日から、雇入れ時全般及び有期労働契約の契約更新時に通知すべき事項が義務として追加されます。
<全ての労働者に対する明示事項>
1.就業場所・業務の変更の範囲の明示
労働者の雇入れ時(無期・有期)と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の変更の範囲(将来の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の配置転換などの変更の範囲のことを指します)についても明示が必要になります。
ポイントとしては、採用後の配置転換が労働契約外だとの主張をされない様に、明示する時の記載内容を事前に検討する必要があると考えます。
<有期契約労働者に対する明示事項等>
2.更新上限の明示
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。
下記の場合は、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります。
① 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
② 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合
(注意)
上記①及び②は、不利益変更という事も考えられるので、更新上限に関し、十分な説明が必要。
また、上1及2は、求人の際にも明示するよう、令和6年4月1日に職業安定法の省令改正がされる予定。
3.無期転換申込機会の明示
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要です。
(注意)
有期契約の終期を年度末などに合わせる事業所は、5年超の時期が契約内に到来する事が考えられるので、どの
時点で無期転換申込権が発生するのかよく確認のこと。
なお、無期転換ルールを意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中
の解雇等を行うことは、労働契約法の趣旨に逸脱します。
4.無期転換後の労働条件の明示
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
(注意)
初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約(5年目)が満了した後は、更新のたびに、今回の改正によ
る無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要。
明示義務違反の罰則
上述した労働条件の明示義務違反があった場合、当該違法行為をした者および事業主は30万円以下の罰金を科せられます(労基法120条1号、121条)。