No.632023.12.1
(令和5年12月1日更新)
総務省は、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に設置された「有識者会議」において、本年10月18日、最終報告書たたき台を提示しました。報告書は10項目から成り、主な提言内容は次のとおりです。
1 新制度および特定技能制度の位置付けと関係性等
・ 現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設。
・ 基本的に3年の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成。
・ 特定技能制度は、適正化を図ったうえで現行制度を存続。
2 新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方
・ 受入れ対象分野は、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく新たに設定し、
特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定。
※国内における就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外。
・ 従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、「主たる技能」を定めて育成・評価
(育成開始から1年経過・育成終了時までに試験を義務付け)。
3 受入れ見込数の設定等の在り方
・ 特定技能制度の考え方と同様、新制度でも受入れ対象分野ごとに受入れ見込人数を設定
(受入れの上限人数として運用)。
4 新制度での転籍の在り方
・ 「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化。
・ これに加え、以下を条件に本人の意向による転籍も認める。
→ 計画的な人材育成等の観点から、一定要件(同一機関での就労が1年超/技能検定試験基礎級・
日本語能力A1相当以上の試験「日本語能力試験N5等」合格/転籍先機関の適正性「転籍者数等」)
を設け、同一業務区分に限る。
・ 転籍前機関の初期費用負担につき、正当な補填が受けられるよう措置を講じる。
・ 監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。
・ 育成終了前に帰国した者につき、それまでの新制度による滞在が2年以下の場合、前回育成時と異なる
分野・業務区分での再入国を認める。
・ 試験合格率等を受入れ機関・監理団体の許可・優良認定の指標に。
5 監理・支援・保護の在り方
・ 技能実習機構の監督指導・支援保護機能や労働基準監督署・地方出入国在留管理局との連携等を強化し、
特定技能外国人への相談援助業務を追加。
・ 監理団体の許可要件等厳格化。
受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限/外部監視の強化による独立性・中立性
確保。
職員の配置、財政基盤、相談対応体制等の許可要件厳格化。
・ 受入れ機関につき、受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制適正化、分野別協議会加入等の
要件を設定。
6 特定技能制度の適正化方策
・ 新制度から特定技能1号への移行は、以下を条件。
① 技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験合格
② 日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格
※当分の・間は相当講習受講も可
・ 試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。
7 国・自治体の役割
・ 入管、機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除。
8 送出機関および送出しの在り方
・ 二国間取決め(MOC)により送出機関の取締りを強化。
・ 送出機関・受入れ機関の情報の透明性を高め、送出国間の競争を促進するとともに、来日後のミスマッチ
等を防止。
・ 支払手数料を抑え、外国人と受入れ機関が適切に分担する仕組みを導入。
9 日本語能力の向上方策
・ 継続的な学習による段階的な日本語能力向上。
・ 日本語支援に取り組んでいることを優良受入れ機関の認定要件に。
10 その他(新たな制度に向けて)
・ 政府は、人権侵害行為に対しては現行制度下でも可能な対処を迅速に行う。
・ 政府は、移行期間を十分に確保するとともに丁寧な事前広報を行う。
・ 本人意向の転籍要件に関する就労期間について、当分の間、分野によって1年を超える期間の設定を認め
るなど、必要な経過措置を設けることを検討。
上記4の転籍について、提言では、外国人技能実習生が失踪するケースなどを踏まえ、次の内容が盛り込まれました。
……なお、正規の転籍の手続によらず失踪等した外国人についても、事情に応じて正規の手続に復帰する余地を残
しておくことが重要であり、監理団体等が必要な転籍支援等を行うべきとする意見もあったため、その旨付言す
る。
また、上記5のうち「外部監視の強化」については、次のような意見を踏まえて盛り込まれたものであるとされています。
……外部者による監視については、現状、多くの監理団体で、弁護士、社会保険労務士等が外部監査人として選任
されている実情があるところ、これらの有資格者等の選任を義務付けた上、その氏名の公表等の措置を講じてお
くべきといった意見もあった。
なお、有識者会議としては 2023年内に最終報告をまとめる予定です。